「言わなくていい言葉」「言うべき言葉」

「結論の言葉」と「説明の言葉」のことを書いた。
どちらかが必要なときに、もう一方の言葉を言ってしまうとそれは【言わなくていい言葉】になる。
なら、本来言うべきだったことを言っていないのだから【言うべき言葉】がある。
「言うべきなのに言われていない」ことからも心理分析できる。

 

一般的によく知られているのは男女の会話のすれ違いだろう。
女性が男性に今日の出来事を話す。
その中であまりいい気持ちのしないことがあった、ということを言う。
すると男性は「それはそうなる前にこれこれこうしておけばよかった。
でも起こってしまったものはしょうがないから、今からこうすれば」と受け答えする。
すると女性は怒り出すか、ふくれるか、漫然としない表情を浮かべながら「そうだね」と言う。

何が起こっているのか?というと、女性は感情共感の言葉を求めているのに、男性は問題解決の言葉で対応し、話が噛み合っていないということだ。
前提が違う。
女性は「そうか、大変だったね」と言われればそれで良いのに、男性は自分ができることで上手く力になろうと思って解決策を提示する。
その解決策はしかし「言わなくていい言葉」で、「言うべき言葉」は感情共感の言葉だったのだ。
すれ違いや話のズレは誰にでも起こることだが、その中身には「言うべき言葉を言っていない」なぜなら【会話の前提が異なっているから】という背景がある。
『なら、その人はこの内容の話題に対して、なぜその前提や背景を採用したのか?』と考えることで「普段どのような前提と心理背景を持つのか」ということがわかってくる。

 

「ロジカルシンキング」では【言うべき言葉】がないことを、抜け、漏れ、飛びと表す。
話の必要なパーツがないことが「抜け」や「漏れ」。話の途中でいきなり別の話題になることが「飛び」だ。
必要な情報が伝えられなかったり、結論がないまま転換されたりする。

逆に【言わなくていい言葉】のひとつとして取り上げられているのが「重複」で、同じことを2度3度繰り返すことを指す。
もちろん確認するために、大事なことを何度も伝えることはあるが、普通の話で一度言ったことを、聞き手が理解しているのに何度も言う必要はない。

「抜け」「漏れ」「飛び」「重複」は、どれもロジカルシンキングを考える上で外せない要素なので、これがよく起こる人はロジカルに物事を考えられないという心理背景がある。
さらに、「抜け」「漏れ」が多い人は結論を急いだり、個人プレーが得意かもしれない。
「飛び」が多い人は、相手不在で自分中心、頭の中が散乱している様子がうかがえる。
「重複」が多い人は、わかってくれない心理と自己過信の背景がある。

 

感情を封じ込めている人の多くが、自分の心で感じたことをそのまま人に伝えることができない。
人に伝えると問題が起こると信じている。
そういう人が、自分の感情を表現することを覚えると少なくない確率で最初【言わなくていいこと】を口にしてしまう。
例えば「この料理美味しくない」はこれまでも感情として不快に思っていたことかもしれないし、我慢をやめて表現できる自分がいていいが、それを話すタイミングや場面を外して「今言わなくていいのに」ということが起こることがある。

つまり感情の言葉を扱うとき、TPOを外してしまう人は素直でストレートであるか、自己中心的であるかのどちらかの可能性が高い。
ただし、自分の感情は自分、相手の感情は相手と切り分けている人は、状況に関係なく自分の言葉を発することはある。
しかしどのような場合も、人間の数が多くなるほど社会性に近づくので、社会的な位置付けが大きいところで発言する人は、多くのプレッシャーをはねのけるバイタリティーがあるか、ありえないほど鈍感か、「王様は裸だ」というように素直過ぎるか、それともその組み合わせか、という予測が立つ。

 

理性的な言葉にも、感性的な言葉にも、「言わなくていい」「言うべき」ことがある。
相手と上手くやり取りをするかどうかではなく、それぞれの言葉がどの心理から発されているのか?ということを探る。
その結果その人の本当の「必要」「不必要」がわかるようになる。
言葉尻と常識観で相手を分析しても本当のことは何も見えてこない。