ありがとうを言う場面

既に書いたが「ありがとう」という感謝の言葉は、何かをしてもらったときや、親切な気持ちを受けたときに返答する言葉だ。
私たちは実際にそういう使い方をしているし、そういう場面を目にしたことが何度もある。
だが言語心理的に考えるなら「ありがとう」は感謝を示す言葉ではない。『終わらせる』言葉になる。

 

「ありがとう」は日常よく使われる頻度の高い言葉だ。
その言葉が使われるきっかけは確かに何かを受けたときだが、その言葉が使われたシチュエーションをよく観察してみると「ありがとう」はそれまでの物事に区切りをつける言葉であることがわかる。
何かをしてもらい、ひと段落ついた。

そして「ありがとうございました」と言えば、その物事、その関係、そのシチュエーションはいつも必ず終わる。一区切りをつける。
落ちたものを拾ってもらって「ありがとう」と言うと、落ちた物事、拾ってくれた親切はその言葉で終わる。
感謝の気持ちは残ることもあるが、物事には一区切りがつく。この言葉にはそういう意味がある。

ということは、誰がどのような場面で特に「ありがとう」を使うことが多いのかと考えれば、その人が終わらせようとするシチュエーションが何かがわかる。
特に都合が悪いシチュエーションや、心理的に負担に感じるので切り上げたい場面がわかってくる。

 

そのシーンの特徴がわかれば、その人が心理的に何を避けようとしているかがわかる。
また「ありがとう」は好意的な言葉なので、相手に好感を与えながら切り上げたいと心理的に思っている物事は何か?がわかるし、その理由がどんなことか?ということも読むことができる。
例えば仕事の場面だけ過剰に「ありがとう」を発し、物事を切り上げようとしているなら、仕事のミス、人間関係の不備、信用の失墜を恐れているし、そこは「やらなければならない」と強く思っていることがうかがえる。